『ウェイン・ショーターの部屋』(http://www.bekkoame.ne.jp/~echika/wayne/wsindex.html)の別館です。


by Fee-fi-fo-fum

Wayne Shorter "Frankfurt 1988"

Wayne Shorter "Frankfurt 1988"       (MEGAVISION)

01、Joy Rider
02、The Three Marias
03、Anthem
04、Over Shadow Hill Way
05、Endangered Species

    Wayne Shorter (ts,ss) Renee Rosnes, Bernard Wright (key)
    Keith Jones (b) Terri Lyne Carrington (ds)    1988.10.3

 これはブートDVDRで収録時間は68分ほど。モトはおそらくTV番組らしく、画質・音質ともにこのままオフィシャル化しても何の問題もないほどのクオリティだ。
 もっとも個人的にはやはり音だけをMDに録音して愛聴している。ショーターのようにイメージが広がる音楽の場合は、映像を見ないで音だけ聴いたほうが自由なイメージが広がって良い気がする。
 さて、先行して出ていた『Austria 1988』と同一のメンバーで約半年後のライヴとなるのだが、おもしろいもので印象がかなり違う。
 というのは、『Austria 1988』ではキース・ジョーンズのベースのファンキーな味がけっこう前面に出ていた印象があるのだが、この演奏ではそこはぐっと抑えられてリズムは滑らかになり、かわりにツイン・キーボードによるファンタジックな広がりのあるシンセ・サウンドが印象的に演奏を包んでいる。『Austria 1988』よりむしろ96年の『Live Express』あたりのサウンドと共通点が感じられるもので、こちらのほうがよりショーターらしいといえるかもしれない。とくに "The Three Marias" のような曲はこちらのバージョンのほうが曲のイメージに合っている気がする。
 選曲は3曲が『Joy Rider』、残る2曲が『Atlantis』収録の曲となっている。『Austria 1988』では『Joy Rider』収録曲が一曲だけだったので、このDVDでたっぷりと聴けるのはうれしい。『Joy Rider』が何月にリリースされたのかわからないのだが、ひょっとすると『Austria 1988』(3月21日録音)はリリース前のライヴで、こちらが『Joy Rider』リリース後のツアーからの映像なのかもしれない。

 ところで、この時期のライヴを聴くことで『Joy Rider』というアルバムの性格がわかってきた気がする。
 『Atlantis』と『Phantom Navigater』というのは、多分スタジオの発想で作られたアルバムだ。一枚のディスクとなる作品として、スタジオで精密に組み立てられ、完成されている。しかしそれをライヴで演奏するとなると、この音楽をどのようにライヴ・バンドで再現するか改めて考えなけらばならない作品だ。ショーターとしても『Atlantis』を作ったのはまだウェザーリポート存続中、『Phantom Navigater』は解散直後で、まだレギュラー・バンドを組んで活動はしていなかった時期であり、だからこそそういった音楽になったのではないか。
 対してレギュラー・バンドでの活動を続けるなかで作られた『Joy Rider』は前二作と比べ、はじめからライヴでの演奏することを前提として作られている面が大きいように思える。曲の作りやアレンジがライヴで演奏しやすく、映えるように作られていて、実際 "Over Shadow Hill Way" など、後々までライヴのレパートリーとして残ってくる曲を含んでいる。
 しかしアルバムとしての『Joy Rider』前二作と比べてもう一つ独自の世界を築ききれてないように感じるのも、それが理由のような気がする。つまり、ライヴでの演奏を前提としたスタジオ録音というのは、結局ライヴの青写真にすぎないものになってしまうのではないか。
 そもそもジャズという即興演奏の真剣勝負を魅力の源泉とした音楽は、スタジオで計算して音楽を組み立てるより、ライヴ等でのやり直しのきかない一発勝負でこそ真の魅力を発揮するものだ。『Atlantis』や『Phantom Navigater』はライヴでの再現など考えずに好きなように作ったために、かえってライヴ演奏とは違った魅力を持つ音楽に仕上がったと思う。しかし、ライヴを前提としながらスタジオで作られた『Joy Rider』は、同時期のライヴと比べてしまった場合、やはり魅力に乏しい面が大きいのは否定できないように感じられるのだ。
 少なくともこのDVDで聴ける3曲については、『Joy Rider』で聴けるスタジオ録音より、このライヴ・バージョンのほうがずっといい気がする。
 ショーターもそのことに気づいて、2001年以後のショーター・カルテット(レギュラー・バンド)のアルバムはスタジオ録音ではなく、ライヴ録音のなかから良いものを選んでアルバム化する方法をとるようになったと考えるのは想像のしすぎだろうか。
 いずれにしろ、この88年のバンドは素晴らしい。
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by Fee-fi-fo-fum | 2009-03-13 00:27 | Wayne Shorter