『ウェイン・ショーターの部屋』(http://www.bekkoame.ne.jp/~echika/wayne/wsindex.html)の別館です。


by Fee-fi-fo-fum

Wayne Shorter "Copenhagen 1996"


■Wayne Shorter "Copenhagen 1996"      (MEGADISC)


「Disc-1」
01、Chief Crazy Horse
02、On the Milky Way Express
03、At the Fair

「Disc-2」
04、Maya
05、Pandora Awakened
06、The Three Marias
07、Children of the Night (fade out)

    Wayne Shorter (ts,ss) David Gilmore (g)
    Jim Beard (p, key) Alphonso Johnson (b)
    Rodney Holmes (ds)       
         Live at Circus, Copenhagen  1996.7.13  

 ブートCDRで、音質は文句なしのオフィシャル・レベル。収録時間は85分弱だ。
 クレジットが正しければ『Live Express』の3日後のライヴとなるが、重複する曲が「On the Milky Way Express」の一曲きりというのが嬉しい。
 しかし重複曲とは関係なしに、演奏そのものが『Live Express』とはだいぶ印象の違うライヴだ。それは、基本的にはエレクトリック・ジャズではあるのだが、よりアコースティックっぽいサウンドになっていることだ。
 冒頭の "Chief Crazy Horse" は伝統的なアコースティック・ジャズのスタイルで演奏されている。2曲め以後はエレクトリック・ジャズになるのだが、ジム・ベアードがソロではアコースティック・ピアノを使用している。そのせいか『Live Express』ではあれだけ活躍していたジム・ベアードが地味で、かわりにギターのギルモアが活躍が目立つ。
 ともかく『Live Express』と並んで必聴モノのライヴ盤だ。
 聴いていこう。
 冒頭の "Chief Crazy Horse" は先に書いたとおりアコースティック・ジャズのスタイルでの演奏だが、後のショーター・カルテットのような集団即興のスタイルにはまだ至っていない。50年代以来の伝統的なスタイルで、個人的にはいま一つ興味を持てなかった。同じスタイルでもこの後の『Tokyo 1996』の冒頭のアコースティック・ジャズ演奏のほうが録音のせいかおもしろくかんじた。
 そして2曲めからは、音楽による宇宙旅行に参加する気持ちで聴いてみるとおもしろい。この時期のショーターのライヴ演奏の魅力の一つは展開の多彩さにあって、ほとんどの曲が10分を超える長尺の演奏になるが、ただソロが長く続いているため曲が長くなるのではなく、一曲のなかでも音楽が次々に展開していって、新しい風景や表情を見せていき、その中で即興演奏も織りまぜていくスタイルをとっているからだ。つまりショーターのいうところの「音楽的冒険物語」が繰り広げられ、その構成は80年代後半のショーター・バンドのライヴ演奏より複雑なものになっている。
 まずは、にわかに周囲から風が湧きおこり、前奏からじょじょに加速をつけてバンドはゆっくり天空へと舞い上がっていくのを体感しよう。"On the Milky Way Express" のテーマが飛び出して、さあ冒険の始まりだ。次の "At the Fair" は宙を駆けるような演奏で、スタジオ盤では静かな雰囲気だった曲が躍動感さえ感じさせる演奏で盛り上がっていく。
 そして「Disc-2」移ると、一曲めが静かな演奏で始まり、CDの後半にむかって盛り上がっていく流れになっている。落ち着いた "Maya" は再び神秘的な地上に降り立ち、 "Pandora Awakened" から "The Three Marias" へとまた宙へ舞い上がっていく。そしてこれまた宙を駆けるような "Children of the Night" に至るのだが、ここが本作の唯一の欠点で、ショーターのソロの途中で曲がフェイド・アウトしてしまう。とはいえ9分以上は聴けるので、たっぷりと鑑賞はできる。たぶんこれからエンディングに向かうところでのフェイド・アウトじゃないかと思い込んで自分を慰めている。(ところで M.Mercer の『Footprints:The Life and Work of Wayne Shorter』によると、この「Children of the Night」というのは映画のなかでドラキュラが言った台詞からとったタイトルだそうだ)
 さて、この「音楽的冒険物語」を作りだしているのは何かといえば、それは主に編曲によるものだろう。そしてその編曲性は2000年代のショーター・カルテットによっても、集団即興の手法と融合されて演奏を支えていくことになる。
 でも、そう思うと、この頃のバンドの演奏の展開も、ほんとうに編曲だけによるものなんだろうかという疑問も湧いてくる。実は即興でどんどん展開しているのであり、それが一人の即興にバンド全体が応えて息を合わせて変化していくので、はじめからそのように編曲されて決められていたように見えている部分もあるのではないか? 即興ははじめから書かれていたように、はじめから書かれていたものは即興で演奏されたように演奏するというのがショーターの信条だし。
 実際のところどうなのかはわからないが、少なくともエレクトリック・バンド、アコースティック・バンドの差をこえて、この頃のバンドの演奏と2001年からのショーター・カルテットの演奏との距離はそう遠くない気がしている。
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by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-07 01:03 | Wayne Shorter