『ウェイン・ショーターの部屋』(http://www.bekkoame.ne.jp/~echika/wayne/wsindex.html)の別館です。


by Fee-fi-fo-fum

カテゴリ:Wayne Shorter( 13 )


■ミシェル・マーサー『フットプリンツ 評伝ウェイン・ショーター』  (潮出版社)


 ウェイン・ショーターの評伝としては最初の本なのだが、なんだか全面的に賞賛はしたくない気分にさせられる本だ。
 ぼくの場合(というか、ほとんどの人にとってもそうだと思うが)ウェイン・ショーターに対する興味は彼が生み出した音楽という点にあって、彼がどんな人生を送ってこようが、どんな宗教を信じてようが、どんな人と親しかろうが、基本的にはどうでもいい。彼の音楽を理解する上で必要な程度書かれていればそれでいい。一方、彼の生み出した音楽に関してはできるだけ多くのことが知りたい。
 しかし、この本の作者の興味は、ぼくとはかなり違うところにあるようだ。どんな有名人と親しいか詳しく書いてあるし、とくに宗教関係のことはやたら詳しく書いてある。それでいて、ショーターの生み出してきたアルバムの数々については、ごく簡単にしか触れられてないものが多い。
 音楽活動についても、例えばサンタナとのツアーなど、べつに一章をさいて書くほどのものでもないだろうと思うところが詳しく書いてあって、もっと詳しく書いてほしい部分が書かれていない。
 もちろん評伝なんだから人生のアウトラインを書いていくものなんだろうが、もっとショーターの音楽の本質に切り込んでいく視点はあってほしいし、彼自身の音楽と直接関係のないことは抑えて書いていくくらいのバランス感覚がほしいと思う。
 作者の音楽に対する意見にもあまりうなずけない点が目立つ。
 とはいえ、否定する気にもなれない。
 とくに最初のあたりを読めば筆者のショーターに対するインタビューは困難を極めるものであったのは容易にわかるし、ショーターに過去のアルバムに対する解説を求めてもきちんと答えてなんてくれないだろうということもよくわかる。不充分とは思っても、よくここまで聞き出してくれたと感謝すべきなのかもしれない。
 それに、なんだかんだいっても、この本を読んで初めてわかったことも多い。例えばプラグド・ニッケルのライヴなど、どうしてあのような演奏になったのかは、この本を読んで初めてわかった。
 それと、改めて気づかされたのはショーターのクラシックに対する傾倒の深さだ。
 実はぼく自身、以前はほとんど聴かなかったクラシックを、最近になって聴きはじめているのだが、そういった耳で聴くと『Atlantis』以後のアルバムはむしろクラシックの流れで聴くべきアルバムではないかという気もしてきている。このへんの紹介文は書き直す必要がありそうだ。

 それにしても、長時間インタビューができたのなら、作者が理解できなくてもいいから、ショーターが言った言葉をそのまま書いくことをもっとしてほしかった。作者には理解できなくても、読者には理解できるショーターの言葉もあるはずだ。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-06-20 06:39 | Wayne Shorter

■Wayne Shorter "Copenhagen 1990 feat. Larry Coryell"  (MEGADISC)


「Disc-1」
01、Sanctuary
02、Footprints
03、The Three Marias

「Disc-2」
04、Virgo Rising
05、Pinocchio 〜 On the Milky Way Express
06、Endangered Species

    Wayne Shorter (ts,ss) Larry Coryell (g)
    Jim Beard (key) Jeff Andrews (b)
    Ronny Barrage (ds)       
         Live at Jazzhus Montmarter, Copenhagen  1990.10.7


 これはブートCDRで、音質はきわめて良く、文句無しのオフィシャル並み、収録時間は90分ほど。このままオフィシャル化してもらいたい、必聴モノのライヴだ。
 上記のとおりラリー・コリエルと共演ライヴだが、冒頭で「ウェイン・ショーター・クインテット」と紹介されているので、ショーターのバンドにコリエルが加わったかたちだろう。
 ぼくは本来有名ミュージシャンどうしの共演が必ずしも良い結果をもたらすとは限らないと思っている。とくにソリストどうしの共演となると、たんに交互にソロをとってるというだけで、別に一緒に聴いたからといってどうなんだ? と言いたくなる場合も多い。
 しかしこの共演は凄い! しょっぱなからショーターのサックスにからみついてくるコリエルのギターを聴いて、相性の良さにゾクッとする。
 コリエルは主にアコースティック・ギターを使っていて、アンサンブルの部分では目立たないきらいはあるが、シブくて魅力的な音色だ。ベアードもソロでは主にアコースティック・ピアノの音に近いキーボードを弾いているし、バンドそのものも基本的にはフュージョン/エレクトリック・ジャズでありながら、みょうにアコースティックな雰囲気を感じるサウンドになっている。躍動感には欠けるかわりに、アコースティック・ジャズ的なくつろぎというのか、そういった感触をうける。
 注目すべきはショーターのサックスの音に対して対話的に応じてくるのが共演歴が長いベアードよりむしろコリエルであるところだ。コリエルはソロ・スペースで即興演奏を繰り広げるだけでなく、演奏全体のなかを自由に泳ぎまわって、さまざまな楽器と対話している。コリエルが加わったことで演奏全体の対話性が増している。
 もちろんコリエルのソロも充分に良い。好ましいのはコリエルという人がクールに燃え上がるタイプのギターリストである点だ。ショーターとギターリストが共演する場合、サンタナのような熱血系であるより、このようなクール系のほうが合う気がする。それにしても、オフィシャル化されたサンタナとの共演ライヴと聴き比べるにつけ、オフィシャル化してほしいのはむしろ本作のような演奏だと思わずにいられない。
 もちろんショーターの演奏もアタマからゾクゾクするほどいいし、ベアードも本作ではかなりいいソロをとっている。いまにも不吉なことがおこりそうな不気味さに満ちた "Sanctuary" はこの曲のベスト・トラックではないだろうか。
 たんに有名ミュージシャンが二人同時にステージに乗ってます的な共演ではなく、1+1が3にも4にもなる共演とはこういうものを言うのだろう。
 70年代からこっち、自分のバンドにギターリストは加えなかったショーターが、1996年のバンドにギルモアを加えたのはどういう心境の変化だったんだろうと思っていたが、この共演が上手くいったからじゃないかと考えるのは考えすぎだろうか。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-13 01:34 | Wayne Shorter

■Carlos Santana & Wayne Shorter Band "Live at the 1988 Montreux Jazz Festival"  (Liberation)


「Disc-1」
01、Spiritual
02、Peraza
03、Shh...
04、Incident at Neshabur
05、Elegant People
06、Percussion Solo
07、Goodness and Mercy
08、Sanctuary

「Disc-2」
09、For Those Who Chant
10、Blues for Salvador
11、Fireball 2000
12、Drum Solo
13、Ballroom in the Sky
14、Once It's Gotcha
15、Mandela
16、Deeper, Dig Deeper
17、Europa
18、Bonus Track: Inerviews with Carlos Santana, Wayne Shorter & Claude Nobs

    Wayne Shorter (ts,ss) Carlos Santana (g)
    Patrice Rushen, Chester D.Thompson (key)
    Alphonso Johnson (b) Leon "Ndugu" Chancler (ds)
    Armando Peraza (per) Chepito Areas (timb)
                           1988.7.14
 
 1988年に行われたショーターとサンタナのツアーから、モントルーでのライヴ音源がオフィシャル化された。上はCD版の曲目だがDVDも出ている。演奏時間は120分強で、ほかボーナストラックとしてインタビューが3分ほど入っている。
 メンバーは上記のとおりサンタナのバンドにショーターがゲスト参加したかたちだが、パトリス・ラッシェン、アルフォンゾ・ジョンソンなどショーターゆかりの顔もあり、ツイン・キーボードに打楽器3人の8人編成という大所帯のグループだ。
 先に出回っていたこのツアーからのブート盤より音質・バランス共に大きく向上し、とくに音質は文句なしの高音質で、まず感激した。しかしショーターのサックスの音はオフ気味なのは変わらず、サンタナのギターはおろか、キーボードの音より小さく聴こえ、聴いていて哀しくなる。
 さて、聴いた感想だが、そんなバランスの問題をおいておくとしても、複雑な心境だ。
 いくらバランスがオフ気味といっても、ショーターの見せ場はたっぷりとある。曲によってはサンタナのソロがない、完全にショーター中心の曲もある。だから、たぶん80年代後半のショーター・バンドのライヴ盤が聴きたくても手に入らなかった頃にこれを聴いたのなら喜んで愛聴していたかもしれない。
 しかし、ブート盤とはいえ同じ88年のショーター・バンドのライヴが高音質で聴ける現在となってしまっては、正直いってこのバンドのライヴは、88年ショーター・バンドのライヴよりかなり見劣りがする。
 8人編成の大所帯ではグループ間での対話を重視した演奏は難しく、編曲に頼った演奏となる。そこが既にショーター的ではない。それでもこのバンドの演奏は躍動感があってサンタナのバック・バンドとしては充分だ。けれど、ショーターのバック・バンドとして聴くとサウンドがわかりやすすぎ、安定感がありすぎて、スリルや緊張感が感じられないのだ。たぶん和声的な単純さが原因ではないだろうか。
 とはいっても、先述したとおりショーターの見せ場はある。しかしショーターの見せ場とサンタナの見せ場は別々で、けっきょく交互に自分の演奏をしているだけで、共演することによって生まれてくる何かというものは感じられない。それでは、そもそも一緒にライヴをやる意味ってあったんだろうかとも思えてくる。
 大物どうしの顔合わせなんてそんなものだと言う人もいるかもしれないが、この後の1990年のラリー・コリエルとの共演ライヴでの緊密な対話性をもった演奏の見事さを聴いてしまうと、それに比較して本作がよけい不満足なものに聴こえてくる。
 オフィシャルで出してもらったものにあまりケチはつけたくないし、ショーターの見せ場はあるのだからそれでいいじゃないかともわりきれればいいのだけれど、やはり本作と比べると88年のショーター・バンドや90年のコリエルとの共演ライヴのほうがずっと魅力的に聴こえてしまうのは否定できない。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-13 01:32 | Wayne Shorter

■Wayne Shorter "Live at Montreux 1996"  


01、On the Milky Way Express
02、At the Fair
03、Over Shadow Hill Way
04、Children of the Night
05、Endangered Species

    Wayne Shorter (ts,ss) David Gilmore (g)
    Jim Beard (p, key) Alphonso Johnson (b)
    Rodney Holmes (ds)        1996.7.8

「Bonus Tracks」

Introduction by Quincy Jones
06、Footprints
07、On the Milky Way Express

    Wayne Shorter (ts,ss) Herbie Hancock (p,key)
    Stanley Clark (b) Omer Hakim (ds)   1991

Introduction by Quincy Jones
08、Pinocchio
09、Pee Wee / The Theme

    Wallace Roney (tp) Wayne Shorter (ts,ss)
    Herbie Hancock (p) Ron Carter (b)
    Tony Williams (ds)             1992


 1996年のショーター・バンドのライヴが遂にオフィシャルでDVDとしてリリースされた。
 モントレーでのライヴであり、ボーナス・トラックとして91年のスーパー・カルテット期と、92年のトリビュート・トゥ・マイルス期のライヴの映像が一部づつ入っている。
 収録時間は、アナウンスやテロップの時間を省いた正味の演奏時間でいくと、96年のライヴが55分ほど、91年が26分弱、92年が20分ほど。中心となる96年のライヴの時間がモントレーのライヴのためか短めなのは不満点ではあるが、まずはこのバンドのライヴがオフィシャル化されたという快挙を喜びたい。画質・音質は当然のように完璧だ。
 まず96年部分から聴いていこう。
 7月8日の演奏なので『Live Express』の二日前のライヴであり、選曲でみれば初のオフィシャルにふさわしい、この時期のショーター・バンドの魅力を充分に伝えるナンバーが揃っているように見える。でも5曲でたったの計55分という点でわかるとおり、それぞれが充分な長さで演奏されているとはいえない。「01」「02」「03」という『High Life』収録曲はどれも10分を超える演奏ではあるのだが、"Over Shadow Hill Way" は8分、"Endangered Species" に至っては5分にも満たないショート・バージョンだ。この時期のショーター・バンドの演奏の魅力は物語的展開をもった編曲と即興演奏の融合にあるので、1曲10分を超えるくらいの充分な長さで演奏してこそ本当の魅力がわかる。それでも高速度で駆け抜ける "Over Shadow Hill Way" はこれはこれで満足できる演奏だが、"Endangered Species" は正直物足りない演奏だ。
 対して『High Life』収録曲のほうはどれも充分に堪能できる。とくに『Copenhagen 1996』では途中でフェイド・アウトしてしまっていた "Children of the Night" が完全収録されていることがうれしい。
 とはいえ、やはり計55分という演奏時間はこのバンドの魅力を充分味わいきるには不充分な内容だと思う。"Pandora Awakened" や "Virgo Rising" など未収録の名曲もある。やはり『Live Express』や『Copenhagen 1996』も合わせて聴きたいところだ。

 続いて91年のスーパー・カルテットでの演奏だが、正直このバンドのライヴはこんなふうにボーナス・トラックとして一部だけ入れるのではなく、完全版としてオフィシャル化してもらいたいところだ。このバンドの演奏はCDでもオフィシャルでは手に入らないのではないか。まあ、高音質のブート盤がいろいろ出ているので困ることはないが、もし同じ音源がオフィシャルとブートで出ていたら、たとえ値段が高かったとしてもオフィシャルを買うぐらいの倫理観はもっているつもりだ。
 でも、ここに収録されて良かったとおもう点は、同じエレクトリック・ジャズのスタイルでの演奏でありながら、96年のショーター・バンドとはかなり違う演奏なので、96年のバンドの特徴を浮き彫りにする役割を果たしているのではないかということだ。
 つまり、96年のショーター・バンドの演奏は展開のある編曲性と即興演奏の融合が特徴となっているが、スーパー・カルテットの演奏ではそのような点はあまり見られず、ただ各メンバーのソロを順番に聴かせていく演奏になっている。つまりエレクトリック楽器を使ったジャズそのものだ。
 この違いを聴くことで、96年のショーター・バンドが普通のエレクトリック・ジャズとは違うものを目指したバンドだったことがわかる。

 続いて92年のライヴ部分だが、このバンドの演奏は既にオフィシャルでCDがリリースされているのでそう新鮮味はない。それにメンバーからいってVSOPの再現みたいなものなので、さらに新鮮味はない。
 とはいえトランペットが抜けたカルテットで演奏される "Pee Wee" はCDでは未収録だし、映像がオフィシャル化されたのも初めてかもしれない。
 91年と合わせてボーナス・トラック部分はそれぞれのバンドでの演奏のうちショーター作の曲か、ショーターの見せ場の演奏をセレクトしているようで、それはそれで満足して聴くことはできる。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-10 00:47 | Wayne Shorter

■Wayne Shorter "Copenhagen 1996"      (MEGADISC)


「Disc-1」
01、Chief Crazy Horse
02、On the Milky Way Express
03、At the Fair

「Disc-2」
04、Maya
05、Pandora Awakened
06、The Three Marias
07、Children of the Night (fade out)

    Wayne Shorter (ts,ss) David Gilmore (g)
    Jim Beard (p, key) Alphonso Johnson (b)
    Rodney Holmes (ds)       
         Live at Circus, Copenhagen  1996.7.13  

 ブートCDRで、音質は文句なしのオフィシャル・レベル。収録時間は85分弱だ。
 クレジットが正しければ『Live Express』の3日後のライヴとなるが、重複する曲が「On the Milky Way Express」の一曲きりというのが嬉しい。
 しかし重複曲とは関係なしに、演奏そのものが『Live Express』とはだいぶ印象の違うライヴだ。それは、基本的にはエレクトリック・ジャズではあるのだが、よりアコースティックっぽいサウンドになっていることだ。
 冒頭の "Chief Crazy Horse" は伝統的なアコースティック・ジャズのスタイルで演奏されている。2曲め以後はエレクトリック・ジャズになるのだが、ジム・ベアードがソロではアコースティック・ピアノを使用している。そのせいか『Live Express』ではあれだけ活躍していたジム・ベアードが地味で、かわりにギターのギルモアが活躍が目立つ。
 ともかく『Live Express』と並んで必聴モノのライヴ盤だ。
 聴いていこう。
 冒頭の "Chief Crazy Horse" は先に書いたとおりアコースティック・ジャズのスタイルでの演奏だが、後のショーター・カルテットのような集団即興のスタイルにはまだ至っていない。50年代以来の伝統的なスタイルで、個人的にはいま一つ興味を持てなかった。同じスタイルでもこの後の『Tokyo 1996』の冒頭のアコースティック・ジャズ演奏のほうが録音のせいかおもしろくかんじた。
 そして2曲めからは、音楽による宇宙旅行に参加する気持ちで聴いてみるとおもしろい。この時期のショーターのライヴ演奏の魅力の一つは展開の多彩さにあって、ほとんどの曲が10分を超える長尺の演奏になるが、ただソロが長く続いているため曲が長くなるのではなく、一曲のなかでも音楽が次々に展開していって、新しい風景や表情を見せていき、その中で即興演奏も織りまぜていくスタイルをとっているからだ。つまりショーターのいうところの「音楽的冒険物語」が繰り広げられ、その構成は80年代後半のショーター・バンドのライヴ演奏より複雑なものになっている。
 まずは、にわかに周囲から風が湧きおこり、前奏からじょじょに加速をつけてバンドはゆっくり天空へと舞い上がっていくのを体感しよう。"On the Milky Way Express" のテーマが飛び出して、さあ冒険の始まりだ。次の "At the Fair" は宙を駆けるような演奏で、スタジオ盤では静かな雰囲気だった曲が躍動感さえ感じさせる演奏で盛り上がっていく。
 そして「Disc-2」移ると、一曲めが静かな演奏で始まり、CDの後半にむかって盛り上がっていく流れになっている。落ち着いた "Maya" は再び神秘的な地上に降り立ち、 "Pandora Awakened" から "The Three Marias" へとまた宙へ舞い上がっていく。そしてこれまた宙を駆けるような "Children of the Night" に至るのだが、ここが本作の唯一の欠点で、ショーターのソロの途中で曲がフェイド・アウトしてしまう。とはいえ9分以上は聴けるので、たっぷりと鑑賞はできる。たぶんこれからエンディングに向かうところでのフェイド・アウトじゃないかと思い込んで自分を慰めている。(ところで M.Mercer の『Footprints:The Life and Work of Wayne Shorter』によると、この「Children of the Night」というのは映画のなかでドラキュラが言った台詞からとったタイトルだそうだ)
 さて、この「音楽的冒険物語」を作りだしているのは何かといえば、それは主に編曲によるものだろう。そしてその編曲性は2000年代のショーター・カルテットによっても、集団即興の手法と融合されて演奏を支えていくことになる。
 でも、そう思うと、この頃のバンドの演奏の展開も、ほんとうに編曲だけによるものなんだろうかという疑問も湧いてくる。実は即興でどんどん展開しているのであり、それが一人の即興にバンド全体が応えて息を合わせて変化していくので、はじめからそのように編曲されて決められていたように見えている部分もあるのではないか? 即興ははじめから書かれていたように、はじめから書かれていたものは即興で演奏されたように演奏するというのがショーターの信条だし。
 実際のところどうなのかはわからないが、少なくともエレクトリック・バンド、アコースティック・バンドの差をこえて、この頃のバンドの演奏と2001年からのショーター・カルテットの演奏との距離はそう遠くない気がしている。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-07 01:03 | Wayne Shorter

Wayne Shorter "Tokyo 1996"


■Wayne Shorter "Tokyo 1996"          (MEGADISC)

01、(Introduction)
02、Valse Triste
03、Maya
04、Pandora Awakened
05、Over Shadow Hill Way
06、Endangered Species

    Wayne Shorter (ts,ss) David Gilmore (g)
    Jim Beard (p, key) Alphonso Johnson (b)
    Rodney Holmes (ds)       
         Live at Tokyo, Japan 1996.9.3

 これはブートCDRで収録時間は64分ほど。ジャケットのクレジットが正しければ『Live Express』や『Copenhagen 1996』の二ヶ月後のライヴとなる。
 『Live Express』や『Copenhagen 1996』と大きく異なるのは音質で、本作はオーディエンス録音のようで、50年代に地下の薄暗いジャズ・クラブで録られたライヴ盤のような、小ぢんまりした薄暗い感じの音になっている。そこを否定的に感じる人もいるのかもしれないが、個人的にはこの音質もこれはこれでシブくて好きだ。ジャズってこういう小ぢんまりした薄暗さが似合う音楽だと思う。とくにギルモアのギターの音がいい感じだ。全体的にベアードよりギルモアの活躍が目につき、そこは『Copenhagen 1996』のほうに似ている。
 聴いていこう。
 1曲めは『The Soothsayer』(65) に入っていたシベリウス作の "Valse Triste" で、これは伝統的なアコースティック・ジャズの演奏。これは『Copenhagen 1996』と同じで、この頃、1曲目はアコースティック・ジャズで演奏することにしていたのかもしれない。
 これがかなりの名演で、薄暗い音質が曲想にすごく合っている。ショーターももちろんいいが、ギルモアがかなりの名演を聴かせる。
 続く2曲はどちらも『High Life』からの曲で『Copenhagen 1996』のディスク2と同じ並び。演奏の雰囲気も『Copenhagen 1996』に近い。
 そして本作でおもしろいのは後半の旧作曲2曲で、このバンドでの演奏が慣れてきたせいなのか、かなり崩した演奏をし、新しいアイデアも見られる。
 まず "Over Shadow Hill Way" はいきなり猛スピードで始まり、『Live Express』ではベアードが高テンションのソロをとった部分で今度はギルモアが高テンションのソロをとる。そしてかなり長いドラム・ソロを経て、別の曲にメドレーしたのかと思わせる変化をみせるが、その後でテーマが出てくるので、一つの曲の内での変化だったとわかる。続く "Endangered Species" も猛スピードの演奏だ。
 音質も含めてかなり個性の強い演奏で、好みは分かれるかもしれないが、『Live Express』『Copenhagen 1996』の後で聴くと変化が楽しめる。が、この時期のショーター・バンドの魅力を一般的にとらえているのは『Live Express』『Copenhagen 1996』のほうだろう。この時期のショーターのライヴ盤をまず一枚聴きたいという人がいたら、『Live Express』か『Copenhagen 1996』のほうを先に聴くことを勧める。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-07 01:01 | Wayne Shorter

Wayne Shorter "Cologne 2007"

Wayne Shorter "Cologne 2007"       (MEGAVISION)

01、Zero Gravity
02、She Moves Through the Fair
03、As Far as the Eye Can See
04、(Interview)
05、Over the Shadow Hill Way
06、Smilin' Through
07、Prometheus Unbound

   Wayne Shorter (ts.ss) Danilo Perez (p)
   John Patitucci (b) Brian Blade (ds)
       Live at Cologne, Germany   2007.4.30

 これはドイツでのライヴを収録したブートもののDVDRだが、映像・音質ともにオフィシャル並みの高クオリティー。モトは多分放送用の収録だろうが、カメラワークなどもきちんとしていて、暗いホールで演奏するカルテットの姿が美しい。収録時間は77分で、途中に4分ほどのインタビューが入るので演奏時間は正味73分ほど。インタビューはショーター以外の3人のメンバーへのものである。
 欠点をいえば演奏からインタビューに入るタイミングが唐突なことだ。これは一曲一曲がきれてる演奏ではなく、ずっとメドレーで演っているので、途中でインタビューを挟むのにはそうするしかなかったんだろう。欲をいえばインタビューなど挟まずに演奏を切れ目なく収録してほしかったところだが、まあそれは贅沢な要求かもしれない。これほどのオフィシャル同然の音質・画質でショーター・カルテットの演奏を73分間も聴けるというだけでも充分すぎるほど満足だ。
 さて、2007年のショーター・カルテットの演奏である。
 長年一緒に演奏してきたことによって、バンドの演奏の対話性はより緊密で自然なものになってきている。対話的に演奏しようと構えなくても、自然に演奏がそうなっているような感じに聴こえた。
 一言でいえば「幽玄」と表現したくなるような神秘的な色彩の濃い演奏だ。ショーターの吹く口笛に呼応するように闇のなかから音楽が風のように現れて、様々に変化しながら空中を浮游し、時には静寂に満ち、時には激しく躍動しては、やがて消えていく……というようなかんじ。カルテットもおそるべき境地に達したものだ。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-04-12 23:07 | Wayne Shorter
Wayne Shorter Quartet "Footprints Alive"     (MEGADISC)


01、Sanctuary 〜 Masqualero
02、Chief Crazy Horse
03、Aung San Suu Kyi
04、Footprints

   Wayne Shorter (ts.ss) Danilo Perez (p)
   John Patitucci (b) Brian Blade (ds)
      Live at Lugano, Switzerland   2001.7.13

 ブートCDRで収録時間は50分弱。音質はオフィシャル並みで文句無し。演奏も文句無しだ。
 では「買い」なのかというと、けっこう迷う人も多いのではないか。
 その理由はオフィシャルの『footprints live』と完全に同時期の録音であり、曲目もすべてダブるからだ。だから新しい何かを発見することは期待できそうもない。だから、とりあえずはオフィシャルの方を聴いとけばそれでいいんじゃないかという気にもなる。
 とはいえ、音源自体はまったくダブらない。詳しく言うと、オフィシャルの『footprints live!』は2001年7月の14日、20日、24日のライヴが収録されているが、本作は13日だからオフィシャル収録の最初の録音日の一日前のライヴということになる。
 そしてジャズはインプロヴィゼイションを身上とする音楽だから、同時期のライヴであっても演奏も同一ということはない。
 ということで聴いてみて、まず驚いたのは3曲目の "Aung San Suu Kyi" だ。これはアプローチのしかたが全然違う。『footprints live!』では最初から軽快でリズミカルだった演奏が、ここでは静寂み満ちた詩的に始まり、後半にむかって荘厳に盛り上がっていく演奏になっている。この曲だけを取り出していうのなら、ぼくはこっちの演奏のほうがいいと思う。というより、両方並べて聴きたい。
 その他の曲はアプローチのしかたは『footprints live!』での同一曲とだいたい同じであり、ただ演奏・アドリブが違うという、いわば一般のジャズの同一曲別演奏とおなじ感じになる。
 しかし、この "Aung San Suu Kyi" の全然違う演奏を聴いてしまうと、ひょっとするとこれらの曲も、たまたまこの日が『footprints live!』収録バージョンと同じアプローチをした日だったのであり、まったく違うアプローチをした日もあったのではないかと思われてくる。
 もっといろいろな音源を聴いてみたくなった。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-04-12 23:03 | Wayne Shorter
Wayne Shorter "Live at Monterey 2000"     (MEGADISC)


01、Masquelero
02、Aung San Suu Kyi
03、JuJu
04、Orbits (with Monterey Chamber Orchestra)
05、Angola (with Monterey Chamber Orchestra)
06、Vendiendo Alegria (with Monterey Chamber Orchestra)

   Wayne Shorter (ts.ss) Danilo Perez (p)
   John Patitucci (b) Brian Blade (ds)
   Alex Acuna (per)
     Live at Monterey Jazz Festival 2000.9.17


 ブートCDRで、音質は若干こもり気味だが、充分に高音質といえるレベルだろう。
 これは何より後ににウェイン・ショーター・カルテットとなるバンドの最初期の演奏を収録したものとして興味深い。『Footprints Live』が2001年7月の録音なので、それより一年近く前の録音だ。さらに後半の3曲には Monterey Chamber Orchestra(モントレー室内管弦楽団とでも訳すか)というオーケストラが加わっており、こちらは『Alegria』の前段階だろう。実際、演奏曲も前半3曲はすべて『Footprints Live』に収録され、後半3曲は『Alegria』に収録されている。
 さて、そのバンドだが、この時点ではアクーニャのパーカッションが加わったクインテットを考えていたことがわかる。エレクトリック/アコースティックを別にすればウェザーリポートと同じ楽器編成であり、またウェザー解散後のショーターの最初のレギュラー・バンド(87年のバンド)もこの楽器編成だった。ショーターにとってこの編成は愛着のあるものなのかもしれない。とすると、ウェザーリポートがずっとこの編成を続けたのはショーターの意向だったのだろうか?
 さて、そのクインテットの演奏を聴いてみると、ウェザーリポート的にパーカッションがリズムを増強するタイプの演奏は、成功していないと思う。カルテットの繊細な対話性から生まれてくる音楽を、こんなふうにリズムのノリが、むしろ汚してしまっている気がする。前半で良いのは "Aung San Suu Kyi" で、ドラムとパーカッションがギクシャクしたかんじのリズムを生み出しているのがおもしろい味になっていると思った。
 ということでレギュラー・バンドからはパーカッションが抜けてカルテットになり、アクーニャは『Alegria』のほうに曲によって参加するのみになったが、この判断は正しかったと思った。
 後半のオーケストラ入りの演奏も含めて、結論をいっていまえば、どの曲も結局は『Footprints Live』や『Alegria』のバージョンが良いということなる。それを確認するためのアルバムといってしまえば、それまでだ。
 でも、ショーターの場合、このような途中経過みたいな演奏が出てくることは珍しいので、やはりこれはこれで聴いて良かったと思える演奏だった。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-04-12 23:00 | Wayne Shorter

Wayne Shorter "Frankfurt 1988"

Wayne Shorter "Frankfurt 1988"       (MEGAVISION)

01、Joy Rider
02、The Three Marias
03、Anthem
04、Over Shadow Hill Way
05、Endangered Species

    Wayne Shorter (ts,ss) Renee Rosnes, Bernard Wright (key)
    Keith Jones (b) Terri Lyne Carrington (ds)    1988.10.3

 これはブートDVDRで収録時間は68分ほど。モトはおそらくTV番組らしく、画質・音質ともにこのままオフィシャル化しても何の問題もないほどのクオリティだ。
 もっとも個人的にはやはり音だけをMDに録音して愛聴している。ショーターのようにイメージが広がる音楽の場合は、映像を見ないで音だけ聴いたほうが自由なイメージが広がって良い気がする。
 さて、先行して出ていた『Austria 1988』と同一のメンバーで約半年後のライヴとなるのだが、おもしろいもので印象がかなり違う。
 というのは、『Austria 1988』ではキース・ジョーンズのベースのファンキーな味がけっこう前面に出ていた印象があるのだが、この演奏ではそこはぐっと抑えられてリズムは滑らかになり、かわりにツイン・キーボードによるファンタジックな広がりのあるシンセ・サウンドが印象的に演奏を包んでいる。『Austria 1988』よりむしろ96年の『Live Express』あたりのサウンドと共通点が感じられるもので、こちらのほうがよりショーターらしいといえるかもしれない。とくに "The Three Marias" のような曲はこちらのバージョンのほうが曲のイメージに合っている気がする。
 選曲は3曲が『Joy Rider』、残る2曲が『Atlantis』収録の曲となっている。『Austria 1988』では『Joy Rider』収録曲が一曲だけだったので、このDVDでたっぷりと聴けるのはうれしい。『Joy Rider』が何月にリリースされたのかわからないのだが、ひょっとすると『Austria 1988』(3月21日録音)はリリース前のライヴで、こちらが『Joy Rider』リリース後のツアーからの映像なのかもしれない。

 ところで、この時期のライヴを聴くことで『Joy Rider』というアルバムの性格がわかってきた気がする。
 『Atlantis』と『Phantom Navigater』というのは、多分スタジオの発想で作られたアルバムだ。一枚のディスクとなる作品として、スタジオで精密に組み立てられ、完成されている。しかしそれをライヴで演奏するとなると、この音楽をどのようにライヴ・バンドで再現するか改めて考えなけらばならない作品だ。ショーターとしても『Atlantis』を作ったのはまだウェザーリポート存続中、『Phantom Navigater』は解散直後で、まだレギュラー・バンドを組んで活動はしていなかった時期であり、だからこそそういった音楽になったのではないか。
 対してレギュラー・バンドでの活動を続けるなかで作られた『Joy Rider』は前二作と比べ、はじめからライヴでの演奏することを前提として作られている面が大きいように思える。曲の作りやアレンジがライヴで演奏しやすく、映えるように作られていて、実際 "Over Shadow Hill Way" など、後々までライヴのレパートリーとして残ってくる曲を含んでいる。
 しかしアルバムとしての『Joy Rider』前二作と比べてもう一つ独自の世界を築ききれてないように感じるのも、それが理由のような気がする。つまり、ライヴでの演奏を前提としたスタジオ録音というのは、結局ライヴの青写真にすぎないものになってしまうのではないか。
 そもそもジャズという即興演奏の真剣勝負を魅力の源泉とした音楽は、スタジオで計算して音楽を組み立てるより、ライヴ等でのやり直しのきかない一発勝負でこそ真の魅力を発揮するものだ。『Atlantis』や『Phantom Navigater』はライヴでの再現など考えずに好きなように作ったために、かえってライヴ演奏とは違った魅力を持つ音楽に仕上がったと思う。しかし、ライヴを前提としながらスタジオで作られた『Joy Rider』は、同時期のライヴと比べてしまった場合、やはり魅力に乏しい面が大きいのは否定できないように感じられるのだ。
 少なくともこのDVDで聴ける3曲については、『Joy Rider』で聴けるスタジオ録音より、このライヴ・バージョンのほうがずっといい気がする。
 ショーターもそのことに気づいて、2001年以後のショーター・カルテット(レギュラー・バンド)のアルバムはスタジオ録音ではなく、ライヴ録音のなかから良いものを選んでアルバム化する方法をとるようになったと考えるのは想像のしすぎだろうか。
 いずれにしろ、この88年のバンドは素晴らしい。
[PR]
by Fee-fi-fo-fum | 2009-03-13 00:27 | Wayne Shorter