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『ウェイン・ショーターの部屋』(http://www.bekkoame.ne.jp/~echika/wayne/wsindex.html)の別館です。


by Fee-fi-fo-fum

Weather Report "Austria 1971"


■Weather Report "Austria 1971"    (MEGADISC)

01、Firefish
02、Early Minor
03、Morning Lake
04、Waterfall
05、Umbrellas
06、(Improv.) 〜 Eurydice
07、Seventh Arrow
08、Orange Lady

     Wayne Shorter (ts,ss) Joe Zawinul (key)
     Miroslav Vitous (b) Alphonse Mouzon (ds)
     Dom Um Romao (per)        1971.7.27


 これはブートCDRで、音質はオフィシャルの『Live in Tokyo』と比べてしまえば落ちるものの、71年の発掘モノという点を考慮すればかなりの高音質というべき部類だ。収録時間は77分ほど。
 1st の録音の5ヶ月後、『Live in Tokyo』の約半年前のヨーロッパ・ツアーからのライヴで、ウェザーリポートの最初期のライヴとして興味深い音源だ。メンバーは Airto Moreiro は1st のスタジオ録音のみの参加なんで、パーカッションは Dom Um Romao が加入している。なお、このヨーロッパ・ツアーの後にドラムは Eric Gravatt に代わる。
 収録曲はよくわからないものがある。1曲めの "Firefish" というタイトルはウェザーリポートの他のアルバムには収録されていないのでわからないが、ジャケットに書いてあったタイトルをそのまま書いておく。このCDR、ジャケットに書かれた収録曲がわりと正しいものが多いので、そういうタイトルの曲なのかもしれない。ただし6曲めにジャケットには書いてない14分を超えるトラックが入っている。これはまずキーボードによる自由な即興演奏が数分続き、じょじょに他のメンバーも加わってきて、全員による演奏が高まってきたあたりで "Eurydice" へとメドレーしていく演奏。
 その他、2曲めの "Early Minor" も『Live in Tokyo』に収録されてるのみでスタジオ盤には収録されていない曲で、この頃のナンバーはライヴで演奏されたのみでアルバムに収録されずに終わった曲もけっこうあるのかもしれない。
 さて、最初に書いたとおり本作はウェザーリポートの最初期のライヴとして興味深い音源ではあるのだが、演奏のスタイルは既に『Live in Tokyo』にかなり近い。曲も "Firefish" 以外はすべてダブる。半年近くの差があっても『Live in Tokyo』もまた1st のツアーの時の演奏であり、同じツアーの途中で演奏がそう大きく変化するものでもないのかもしれない。それにスタジオ盤をみても1st と2nd アルバムは方向性からいってそう大きな違いもない。
 それならオフィシャルでさらに音が良い、さらにツアーの終盤に差し掛かっているため2nd の曲も演奏している『Live in Tokyo』を聴いていれば、とりあえず本作には手を出さなくてもいいかという気にもなる。
 対して『Live in Tokyo』に対する本作の売りとしては、まず初代ドラマーの Alphonse Mouzon の演奏が聴けるという点と、冒頭の14分弱におよぶ "Firefish" という点にあるだろう。
 しかし、ドラマーが代わったことが演奏にそう大きな変化を与えているとは感じられないし、基本的には『Live in Tokyo』の演奏の別バージョンと見ても問題ない気がする。
 まずは『Live in Tokyo』を聴いて、このような演奏がもっと聴きたいと思ったら聴くべきアルバムだろう。
# by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-03 01:54 | Weather Report
■Weather Report "The Quiet Knight"   (SLANG)

01、Radio Intro
02、Vertical Invader
03、Seventh Arrow 〜 125th Street Congress
04、In a Silent Way 〜 It's About That Time
05、Unknown Soldier
06、It's About That Time
07、Boogie Woogie Waltz

    Wayne Shorter (ts,ss) Joe Zawinul (key)
    Miroslav Vitous (b) Eric Gravatt (ds)
    Dom Um Romao (per)       1973.5


 貴重な1973年のライヴを収録したブート盤だ。収録時間は全体で58分半ほどだが、音質は良くはない。特にリズム隊の低音部が遠いのが寂しくなるが、ショーターの音は大きく入っているし、個人的には我慢ができるレベルか。でも、なにより73年のライヴという点が重要だ。この時期は『Live in Tokyo』と『Live and Unreleased』の最初期の部分のちょうど間にあたり、オフィシャル盤ではライヴ演奏が聴けない時期だが、何よりヴィトウスがウェザーリポートを辞める直前であり、ウェザーリポートにとってはバンドが最も大きく変わろうとしていた時期である。
 ウェザーリポートというバンドは毎年何かが違う、変化に富んだ多彩なアルバムをリリースしつづけたバンドだったが、大きく分ければヴィトウス在籍時とベースがアルフォンゾ・ジョンソンに代わって以後の二つに分けることができる。それはスタジオ盤よりライヴ盤での演奏を聴けば一目瞭然で、『Live and Unreleased』に収録された75年から83年までのライヴ演奏を並べて聴いても、同じバンドの演奏に聴こえる。また、『Live in Tokyo』と『Austria 1971』に収録された71年から72年のライヴ演奏を聴いても、同一のバンドの演奏に聴こえる。しかし、この両者はかなり違うバンドの演奏に聴こえる。ウェザーリポートというバンドの大きな変化はベースがヴィトウスからアルフォンゾ・ジョンソンに代わったあたりでおきている。そしてその過渡期がこの73年から74年あたりだろう。
 さて、貴重な録音だが、しかし音源はあやしげな所がある。"It's About That Time" が2バージョン入っていて、まさか一夜のライヴに二回は演奏しないだろうから、複数のライブ音源が入ってるのかもしれない。
 聴いていこう。演奏は 『Live in Tokyo』と同じ "Vertical Invader" から始まり、"Seventh Arrow" へとメドレーしていく。このへんはこの時期のウェザーリポートのオープニングの定番だったのかも。
 続いてジャケットには "125th Street Congress" と記された曲になるのだが、リズムがファンキーでなく普通のウォーキング・ベースなので、別の曲みたいに聴こえる。これは73年の5月のライヴだとジャケットに記されているのだが、となると『Sweetnighter』(73年2月録音)の後のライヴのはずだが、この曲のリズムをステージで再現できなかったのだろうか? そうだとするとその辺がヴィトウスがバンドを辞めるに至る理由だったのかもしれない。あるいはジャケットに記された73年の5月の録音というのが間違いで、これが "125th Street Congress" の初期形なんだろうか? いずれにしろこのバージョンは少しタルい印象で、後半盛り上がるのでわるい演奏とまで言う気はないが、この曲はスタジオ盤のファンキーなリズムのほうがいい。
 つづくは "In a Silent Way" から "It's About That Time" と続くメドレーで、これはマイルスの『In a Silent Way』のB面と同じ流れだ。まるでザヴィヌルが『In a Silent Way』は俺のアルバムだと言ってるような構成だ。じっさい10分以上続く "It's About That Time" のほうは『In a Silent Way』を超える名演といっていいだろう。特にショーターが登場してからの緊張感がすさまじく、リズムまで躍動しだすという、 "It's About That Time" らしくないような演奏になっている。音質のわるさが悔やまれる。
 続くは14分近くも演奏する "Unknown Soldier" で、この曲はこの後の時期のライヴのレパートリーからは消えてゆくので、これも貴重なライヴ音源だ。この曲はいろんな要素を盛り込んだサウンド・スケープ的な作品だが、スタジオ盤での演奏は完成度が高く仕上げられているために、すんなりと聴けてしまうところがあった。このライヴ・バージョンだと、それぞれの要素がよりぶつかりあって、実験的なかんじの演奏になっていて、ひょっとするとこの演奏のほうが曲の意図がわかりやすいかもしれない。
 そして、よくわからない二回目の "It's About That Time" だが、こちらのほうが演奏時間も短く、散漫な印象で、一回目のほうがだんぜんいい。
 ラストは "Boogie Woogie Waltz" で、こちらのほうは "125th Street Congress" と違ってスタジオ盤に近いリズムのライヴ演奏になっている。となると "125th Street Congress" だってヴィトウスのベースで再現できないとはおもえなく、やはりあれは意識的にやったのか、あるいは違う曲なのかと考えたくなる。
 全体を通しての印象でいえば、やはりここに来ても基本的には『Live in Tokyo』と同じスタイルの演奏だと思う。とはいえ、ラストの "Boogie Woogie Waltz" などでは違うバンドとして生まれ変わろうとしているバンドの姿も感じられなくもない。
 さて、なぜヴィトウスはやめたのかを考えてみよう。一般的に言われていることは当時のファンキー路線との方向性の乖離ということだが、 "Boogie Woogie Waltz" を聴いた限りでは『Sweetnighter』の収録曲はライヴで再現できている気はする。
 現在の個人的な印象でいえば、これから目指す方向性と違うのでヴィトウスが辞めたというより、ヴィトウスが辞めてアルフォンゾ・ジョンソンが加入した後で新しい方向性が見えてきたような気がしているんだが、どうだろう。
# by Fee-fi-fo-fum | 2009-05-03 01:53 | Weather Report

Wayne Shorter "Cologne 2007"

Wayne Shorter "Cologne 2007"       (MEGAVISION)

01、Zero Gravity
02、She Moves Through the Fair
03、As Far as the Eye Can See
04、(Interview)
05、Over the Shadow Hill Way
06、Smilin' Through
07、Prometheus Unbound

   Wayne Shorter (ts.ss) Danilo Perez (p)
   John Patitucci (b) Brian Blade (ds)
       Live at Cologne, Germany   2007.4.30

 これはドイツでのライヴを収録したブートもののDVDRだが、映像・音質ともにオフィシャル並みの高クオリティー。モトは多分放送用の収録だろうが、カメラワークなどもきちんとしていて、暗いホールで演奏するカルテットの姿が美しい。収録時間は77分で、途中に4分ほどのインタビューが入るので演奏時間は正味73分ほど。インタビューはショーター以外の3人のメンバーへのものである。
 欠点をいえば演奏からインタビューに入るタイミングが唐突なことだ。これは一曲一曲がきれてる演奏ではなく、ずっとメドレーで演っているので、途中でインタビューを挟むのにはそうするしかなかったんだろう。欲をいえばインタビューなど挟まずに演奏を切れ目なく収録してほしかったところだが、まあそれは贅沢な要求かもしれない。これほどのオフィシャル同然の音質・画質でショーター・カルテットの演奏を73分間も聴けるというだけでも充分すぎるほど満足だ。
 さて、2007年のショーター・カルテットの演奏である。
 長年一緒に演奏してきたことによって、バンドの演奏の対話性はより緊密で自然なものになってきている。対話的に演奏しようと構えなくても、自然に演奏がそうなっているような感じに聴こえた。
 一言でいえば「幽玄」と表現したくなるような神秘的な色彩の濃い演奏だ。ショーターの吹く口笛に呼応するように闇のなかから音楽が風のように現れて、様々に変化しながら空中を浮游し、時には静寂に満ち、時には激しく躍動しては、やがて消えていく……というようなかんじ。カルテットもおそるべき境地に達したものだ。
# by Fee-fi-fo-fum | 2009-04-12 23:07 | Wayne Shorter
Wayne Shorter Quartet "Footprints Alive"     (MEGADISC)


01、Sanctuary 〜 Masqualero
02、Chief Crazy Horse
03、Aung San Suu Kyi
04、Footprints

   Wayne Shorter (ts.ss) Danilo Perez (p)
   John Patitucci (b) Brian Blade (ds)
      Live at Lugano, Switzerland   2001.7.13

 ブートCDRで収録時間は50分弱。音質はオフィシャル並みで文句無し。演奏も文句無しだ。
 では「買い」なのかというと、けっこう迷う人も多いのではないか。
 その理由はオフィシャルの『footprints live』と完全に同時期の録音であり、曲目もすべてダブるからだ。だから新しい何かを発見することは期待できそうもない。だから、とりあえずはオフィシャルの方を聴いとけばそれでいいんじゃないかという気にもなる。
 とはいえ、音源自体はまったくダブらない。詳しく言うと、オフィシャルの『footprints live!』は2001年7月の14日、20日、24日のライヴが収録されているが、本作は13日だからオフィシャル収録の最初の録音日の一日前のライヴということになる。
 そしてジャズはインプロヴィゼイションを身上とする音楽だから、同時期のライヴであっても演奏も同一ということはない。
 ということで聴いてみて、まず驚いたのは3曲目の "Aung San Suu Kyi" だ。これはアプローチのしかたが全然違う。『footprints live!』では最初から軽快でリズミカルだった演奏が、ここでは静寂み満ちた詩的に始まり、後半にむかって荘厳に盛り上がっていく演奏になっている。この曲だけを取り出していうのなら、ぼくはこっちの演奏のほうがいいと思う。というより、両方並べて聴きたい。
 その他の曲はアプローチのしかたは『footprints live!』での同一曲とだいたい同じであり、ただ演奏・アドリブが違うという、いわば一般のジャズの同一曲別演奏とおなじ感じになる。
 しかし、この "Aung San Suu Kyi" の全然違う演奏を聴いてしまうと、ひょっとするとこれらの曲も、たまたまこの日が『footprints live!』収録バージョンと同じアプローチをした日だったのであり、まったく違うアプローチをした日もあったのではないかと思われてくる。
 もっといろいろな音源を聴いてみたくなった。
# by Fee-fi-fo-fum | 2009-04-12 23:03 | Wayne Shorter
Wayne Shorter "Live at Monterey 2000"     (MEGADISC)


01、Masquelero
02、Aung San Suu Kyi
03、JuJu
04、Orbits (with Monterey Chamber Orchestra)
05、Angola (with Monterey Chamber Orchestra)
06、Vendiendo Alegria (with Monterey Chamber Orchestra)

   Wayne Shorter (ts.ss) Danilo Perez (p)
   John Patitucci (b) Brian Blade (ds)
   Alex Acuna (per)
     Live at Monterey Jazz Festival 2000.9.17


 ブートCDRで、音質は若干こもり気味だが、充分に高音質といえるレベルだろう。
 これは何より後ににウェイン・ショーター・カルテットとなるバンドの最初期の演奏を収録したものとして興味深い。『Footprints Live』が2001年7月の録音なので、それより一年近く前の録音だ。さらに後半の3曲には Monterey Chamber Orchestra(モントレー室内管弦楽団とでも訳すか)というオーケストラが加わっており、こちらは『Alegria』の前段階だろう。実際、演奏曲も前半3曲はすべて『Footprints Live』に収録され、後半3曲は『Alegria』に収録されている。
 さて、そのバンドだが、この時点ではアクーニャのパーカッションが加わったクインテットを考えていたことがわかる。エレクトリック/アコースティックを別にすればウェザーリポートと同じ楽器編成であり、またウェザー解散後のショーターの最初のレギュラー・バンド(87年のバンド)もこの楽器編成だった。ショーターにとってこの編成は愛着のあるものなのかもしれない。とすると、ウェザーリポートがずっとこの編成を続けたのはショーターの意向だったのだろうか?
 さて、そのクインテットの演奏を聴いてみると、ウェザーリポート的にパーカッションがリズムを増強するタイプの演奏は、成功していないと思う。カルテットの繊細な対話性から生まれてくる音楽を、こんなふうにリズムのノリが、むしろ汚してしまっている気がする。前半で良いのは "Aung San Suu Kyi" で、ドラムとパーカッションがギクシャクしたかんじのリズムを生み出しているのがおもしろい味になっていると思った。
 ということでレギュラー・バンドからはパーカッションが抜けてカルテットになり、アクーニャは『Alegria』のほうに曲によって参加するのみになったが、この判断は正しかったと思った。
 後半のオーケストラ入りの演奏も含めて、結論をいっていまえば、どの曲も結局は『Footprints Live』や『Alegria』のバージョンが良いということなる。それを確認するためのアルバムといってしまえば、それまでだ。
 でも、ショーターの場合、このような途中経過みたいな演奏が出てくることは珍しいので、やはりこれはこれで聴いて良かったと思える演奏だった。
# by Fee-fi-fo-fum | 2009-04-12 23:00 | Wayne Shorter